【代表コラム】『富山パラドックス』に挑む:製造業の女性活躍を阻むボトルネックとは

なぜ、とやまスタートアッププログラムに参加したのか
このたび、とやまスタートアッププログラムに採択いただきました。
本プログラムへの参加は、弊社にとって単なるアクセラレーション参加ではなく、今後の事業展開において重要な意味を持つものだと考えています。
弊社は今後、製造業への支援により注力していく方針です。富山県は、全国的に見ても製造業の割合が高く、地域経済において製造業が果たす役割が非常に大きい地域です。
加えて富山県には、以前から注目されてきた特徴があります。女性の就業率は全国3位である一方、女性管理職比率は全国44位にとどまっていること。いわゆる「富山パラドックス」と呼ばれる構造です。
なぜ、これほど働いている女性が多いにもかかわらず、意思決定層に女性が増えないのか。その構造を現地で確かめ、考え続けたいと思ったことが、とやまスタートアッププログラムへの応募につながりました。
富山で向き合った「女性活躍」の現実
通常、とやまスタートアッププログラムは「in 東京」として大手町で開催されますが、今回は特別編として富山県内での開催となりました。
せっかく富山に来た機会を活かし、県の状況をより深く理解したいと考え、富山県商工労働部(多様な人材活躍推進室)の皆さまを訪問し、現在課題とされている点についてお話を伺いました。
女性リーダー育成の成果と、現場に残るギャップ
富山県ではこれまで、女性活躍や女性リーダー育成に継続的に取り組まれてきました。代表的な施策である女性リーダー塾は、延べ700名以上の修了生を輩出し、参加者からの評価も非常に高いと伺っています。
特に印象的だったのは、評価されているポイントがスキル習得以上に横のつながり(ネットワーク)であるという点でした。企業内では女性管理職が1人というケースも多く、同じ立場の人と社外でつながれること自体が、大きな支えになっているというお話が心に残りました。
管理職へのアプローチが示す、企業側の課題意識
一方で、面談を通じて浮かび上がってきたのが、職場に戻った後のギャップです。学びの場では前向きでも、現場に戻ると上司や管理職層との意識の差が大きく、結果として孤立感が生まれてしまう。その構造に対する課題意識を、県としても強く持たれていました。
こうした背景から、富山県では管理職向けのDEI企業成長塾も新たに開始されています。定員を上回る応募があったという事実からも、企業側において「女性活躍は必須のテーマである」という認識が広がりつつあることがうかがえました。同時にそれは、女性個人を頑張らせるだけでは限界があり、管理職や組織側にボトルネックがあると企業自身が感じ始めている表れでもあるように思います。
富山で得た示唆と、これから向き合う問い
プログラム冒頭では富山県知事からのご挨拶もあり、スタートアップに対する期待や支援の姿勢を直接感じる機会となりました。また、協賛企業である北陸銀行、インテック、富山第一銀行、日本海ラボ、北陸電力の皆さまからは、ピッチ後に直接質問やアドバイスをいただき、現場視点での示唆を多く得ることができました。
現在はプログラム前半が終了した段階ですが、後半に向けては、より一層課題の深掘りに焦点を当てたヒアリングを進めていきたいと考えています。
この課題に取り組むことは、私自身を育ててくれた製造業と、そこで働いてきた多くの女性たちが、無理なく力を発揮できる構造をつくり直すことでもあると感じています。
富山で見えた示唆を起点に、まずは製造業、特に製造業で働く女性の課題に向き合いながら、次の一手を丁寧に探っていきたいと思います。

