【代表コラム】営業に女性がいない会社は、何を見落としているのか?

営業職に、女性がいない
「うちには営業職の女性がいないんです」
これは、初めてお会いする企業の方と話すときによく耳にする言葉です。そして、多くの場合こう続きます。
「そもそも希望する人がいないんですよ」
「やりたいと言う女性、見たことがないんですよね」
でも、本当に“希望者がいない”のでしょうか?
少し視点を変えてみると、まったく違う景色が見えてきます。女性が営業を「やりたがらない」のではなく、「やれると思われていない」……。
営業は、お客様の心を動かす仕事です。
言葉の使い方、観察力、丁寧な対話、そして誠実さ。本来、性別とは関係のないスキルで成り立つ仕事なのに、いまだに「女性には向いていない」とされる場面があります。
「あなた、事務のほうが向いているかもよ」
「結婚したら続けるの難しいよね?」
こうした言葉の積み重ねが、「営業=男性の仕事」という思い込みを、組織の前提にしてきたのです。その結果、女性自身も「私には無理かも」と感じてしまう……。
これは希望や適性の問題ではなく、「環境側が選択肢を閉じてきた」という構造の問題です。
いまだに残る“おじさん営業文化”という壁
もう一つ、大きな要因があります。
それは、営業職に求められる“理想の姿”が、いまだに昔のままなことです。
出張が多く、夜の会食が付き物で、休日はゴルフ……。そんな“昭和型営業スタイル”が、今も当たり前だとされていないでしょうか?
そして、本当に今もそれが必要でしょうか?
私自身、営業の現場に身を置く中で、時代の変化をはっきりと感じてきました。
たとえば、お客様からこう言われることがありました。
「コンプライアンスが厳しくなっていて、折半でないと会食を受けられないんです」
「一次会までなら参加できます」
営業における“お付き合い”のルールは、確実に変わってきているのです。
もちろん、まだ旧来の営業文化が色濃く残る業界もあります。
ただ、たとえそういった文化が残っている場所であっても、時代の変化にあわせて営業スタイルを見直すことは可能です。
そのこと自体が、まだ十分に認識されていないように感じます。
さらに、営業部門のトップにいらっしゃる方々自身が、そうした文化の中でキャリアを積んできた場合、どこを見直すべきか、わからなくなっていることもあるかもしれません。
――今こそ、営業のあり方を問い直すタイミングなのかもしれません。
女性営業の活躍は、“組織の柔軟性”の証になる
いま改めて問われているのは、「営業に必要なスキルとは何か?」ということ。
対話力、課題の理解、粘り強さ、提案のロジック……。こうした力を丁寧に磨けば、性別も、年代も、働き方も、もっと多様でいいはずです。
実際、女性営業の活躍をきっかけに、「うちの営業スタイル、これでいいのかな?」という問いが現場に生まれ、それがやがて部門を超えて広がり、組織全体で“多様な営業のあり方”を模索する動きへとつながっていく…… そんな兆しが、少しずつ現れ始めています。
営業文化の変化には、第三者の視点が必要
もちろん、すぐに成果が出る取り組みばかりではありません。
特に「営業の本質は、時間をかけて関係性を築くことだ」と信じられている現場では、その“空気”を変えるのは簡単ではないのが現実です。
だからこそ、内部の常識や慣習から少し距離を置いた、第三者の視点が必要ではないでしょうか。
営業の仕事やスタイルを見直し、これからの組織のあり方を一緒に考えていく。 そんなサポートこそ、今まさに求められているのだと感じています。
(文:芥川広子)