「管理職になりたくない」のではなく「自信がない」──毎日新聞社がCDR組織構造診断とキャリア可視化セッションで見た変化

強みの棚卸しが、管理職を「キャリアの選択肢」に変えた

女性管理職を増やそうとするとき、本人の意欲だけを問うていないでしょうか。毎日新聞社は「毎日新聞DEI宣言」を掲げ、誰もが自らのキャリアを描ける職場づくりを進めています。その中で見えてきたのは、役職に就く意欲の手前にある「自分に務まるのか」という自信の壁でした。ルマルメの「CDR組織構造診断」と「キャリア可視化セッション」を実施した部署では、参加者全員の意識に前向きな変化が表れ、後輩に指示を出すなど日々の行動にも変化が見え始めています。実施部署長の若月竜司氏(写真中央)と、DEI推進委員会事務局の中井正裕氏(写真右)に、導入の背景と取り組み後の変化、今後の展望を聞きました。

(実施概要)
・対象:毎日新聞社 技術センター
・CDR組織構造診断:部署メンバーへのアンケートとヒアリング
・キャリア可視化セッション:選定メンバー5名との個別対話(2回)
・効果測定:セッション前後に同一の質問票(6項目)で回答を比較
・実施時期:2026年6月~8月

目次

意欲が低いのではなく、自信が持てていない

毎日新聞社は「毎日新聞DEI宣言」(https://www.mainichi.co.jp/dei/)で、2030年に女性管理職比率25%という目標を掲げています。社員構成から見れば、本来は自然とその方向に進んでいくはずの数字です。しかし中井氏は「これまで女性管理職が少なすぎた」と話します。身近なロールモデルが少ない、だから自信を持ちにくい、上司もどう育てればよいのか分からない。制度を整えるだけでは解消しにくい、いわば「ソフトの課題」が重なっていました。

全社の従業員満足度調査でも、その傾向ははっきり表れていました。女性社員は男性社員に比べて、役職者を目指す意欲も、役職者としてやっていける自信も、目に見えて低かったのです。中井氏は「自信がないので、なりたくない、なれないと思う傾向がある」と分析し、こうした課題にどのようなプログラムで向き合うべきかを模索していました。

現場を預かる若月氏も、同じ課題を感じていました。部署には管理職志向があまり高くない若手が多い。しかし若月氏の目には、それは意欲の問題には映っていませんでした。

「なりたくないというよりは、なる自信がない。自分の持っているポテンシャルがどのレベルにあるかを、まだ把握できていないのかなと」

上司として「もうそこまでできるのだから、次のステップに進んでほしい」と伝えても、本人からは「いやいや」と返ってくる。若月氏が期待したのは、その壁を第三者の視点で越えることでした。「第三者の視点から『あなたはもう十分に達しているので、次のステップに進むべきです』と伝えてもらう。そういう意識改革ができればというのが、一番期待していたところです」

第三者の目で、組織と個人の現在地を確かめる

ルマルメが最初に実施したのは、CDR(※)組織構造診断です。部署メンバーへのアンケートとヒアリングを通じて、管理職育成に必要な5つの組織構造軸から、組織・上司・本人の三層で職場の状態を可視化します。女性が管理職を目指しにくい理由を個人の意欲だけに求めず、成長を支える職場の条件にも目を向けるのが特徴です。

※CDRは「Company(組織)」「Direct Manager(上司)」「Role-Holder(本人)」の頭文字

中井氏がまず期待したのは、組織の状態を定量的に示せることでした。数字で見えれば社内で課題を共有しやすく、次の打ち手も検討しやすくなります。若月氏にとって、診断結果は日頃の実感と大きく離れたものではなかったといいます。「そんなに想定外も、乖離もなく、良かったと思います。改めて、第三者の目線からのアンケートもたまにやるのはいいのかなと思いました」

外部の視点を入れることに、若月氏はむしろ前向きでした。自由な社風は同社の長所である一方、一般的な考え方を取り入れることで、組織の進む方向を確かめたり修正したりできる。「他の視点を入れたほうがいいと、ずっと思っていました」と若月氏は話します。

診断に続いて、キャリア可視化セッションを実施しました。参加したのは、課長職を目前に控えたメンバーと、これから主任・課長へと成長していくことを期待される若手から選んだ計5名です。普段の業務や評価の場を離れ、ルマルメのコンサルタントとの1対1の対話を通じて、これまでの経験を言葉にし、自分が何を強みとしてきたのかを棚卸ししていきました。

全員が「維持または上昇」、管理職が選択肢に入ってきた

セッションの前後で、参加者には同じ質問票(6項目)に回答してもらいました。その結果、一人ひとりの回答を比べると、どの項目も数値が下がった人は一人もいませんでした。すべての項目が「変化なし」だった人もおらず、全員が何らかの項目で前向きな変化を示し、多い人では4項目ほどが上昇しました(ルマルメ調べ、n=5)。

数値以上に印象的だったのは、実施後の自由記述の内容です。多くの参加者が、自分から管理職について触れていました。それは「管理職になりたい」という言い方ではなく、「このままキャリアを続けていく中で、管理職も選択肢のひとつ」という語り方でした。

【ルマルメ担当者より】

強みを意識できるようになると、管理職が自然と視野に入ってくる。今回それがはっきりと表れました。逆に言えば、強みの棚卸しができていないと自信が持てず、新しいことに挑戦しづらいのだと思います。一歩引いている方を無理に引っ張り上げるのは難しいものです。一度とことん話を聞いて棚卸しをすると、ご本人が自分から一段上がってくる。私たちはその瞬間を待つことを大切にしています。

後輩に指示を出す姿に「管理職になっていく兆し」

変化は現場の行動にも表れました。もともと力を発揮していた社員には、「もう一歩進んでみよう」という積極性が見えるようになりました。特に若手の2人は、自分のスキルに自信を持てたことで視野が広がり、さらに若手の社員に指示を出す場面も見られるようになったといいます。

「自分が管理職になっていくという兆しが出てきたのかな、という気はしました」

若月氏は、社員の受け止め方にも手応えを感じています。「思ったより前向きに考えてくれるんだなと思いました。やっと自分自身を正しく評価できるようになってきたのかな」

若月氏は、力のある社員を積極的に登用したいと考えています。入社1~2年目で大抜擢するような社風ではなく、一定の経験は必要です。それでも「社の組織編成が許す限り、能力のある人間はどんどん上げたい。以前よりはそこを変えていきたい、違う風を吹かせたいと思っています」と話します。

「プラスの方向に話せる機会」が、職場に広がりを生んだ

中井氏が手応えを感じたのは、参加者本人の変化だけではありません。実施前、社内からは「何のために診断を受けるのか」「なぜこの部署なのか」「悪影響が出たらどうするのか」といった慎重な声も上がっていました。しかし取り組みを終えると、若月氏以外の社員からも「若手の成長支援は必要だ」という声が聞かれるようになったといいます。セッションを直接受けていないメンバーにも意識が芽生えたことを、中井氏は「想像以上、期待以上の波及効果」と受け止めています。

中井氏は、こうした対話の場の価値を次のように話します。社内には診療所があり、カウンセリングも常に受けられます。ただ、そこは不調を抱えたときに使われることが多い場です。「プラスの方向に話せる機会というのは、なかなか貴重です。だから大事なんですよ」

「自分と向き合う時間をつくり、それをフォローしてもらうことには、やはり効果があるのだと見させていただきました」

上司の期待とつなぎ、育成の仕組みへ

若月氏は今後、診断で扱ったポイントを、1on1や普段の会話にもさりげなく取り入れていきたいと考えています。さらに次の展開として、上司が一人ひとりに期待していることを事前にルマルメと共有し、セッションで重点的に引き出す方法を提案しました。社員からも「何をクリアすれば主任になれるのか」「何を期待されているのか」と、目安を求める声が寄せられているといいます。「ここを引き出してほしいと先に伝えてから実施すれば、もっと良かったかもしれません」

ルマルメはこの提案を受け、上司の期待値を事前にヒアリングし、セッションの設計に反映する形を取り入れていきます。本人が自分の強みに気づき、上司が求める役割と、そこに至るまでの道筋を示す。この2つがそろうことで、気づきが一時的なもので終わらず、次の経験へとつながっていきます。

取り組みについて若月氏は「純粋にいい機会だと思います。組織的にやったほうがいいと思います」と語ります。中井氏も、キャリア支援を社内の仕組みとして根付かせていく道を探っています。部署ごとに課題や職場の状況は異なります。だからこそ、診断で組織の現在地を確かめ、そのうえで一人ひとりとの対話を設計する。毎日新聞社とルマルメの取り組みは、ここから次の段階へと進んでいきます。


ルマルメは、組織構造・上司・本人の三層から、女性が管理職を目指せる職場づくりを支援しています。「CDR組織構造診断」「キャリア可視化セッション」について詳しく知りたい方は、「お問い合わせ」からご連絡ください。

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